戦国の古文書解読辞典「い」

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凡例

  • 当ページは戦国時代の史料でよく用いられる用語のうち、「あ」で始まる単語を扱ったものである。
  • 当サイトで用語辞典を扱う目的は、主に当サイト上の「織田信長の年表」ページに掲載する翻刻の内容を理解しやすくするためのものである。
    従って、一般的な古語辞書とは異なり、簡便な内容に留めている。
  • 見出し語は便宜上、現代仮名遣いで記す。
    例えば「越度」は「をちど」ではなく「おちど」とするため、「お」の項で扱う。
  • 用例は原則として新字体で記す。
  • 史料は充て字や異体字、方言など非常に多岐に渡るため、全てを記すことは困難である。
    従って当サイトの判断で、便宜上記すものとそうでないものを区別するものとする。
  • 例文は個人的に好例と判断したものを選んだため、時代や地域に偏りがある。
  • 中には当サイトの不勉強による誤った解釈や読み下しもあるため、参考程度に留めていただきたい。
  • 必要に応じて削除し、また加筆・修正を加えるものとする。

揖・・・いうす・いう

(意味)

挨拶すること。または会釈すること。

雖・・・いえども

(意味)

逆説の接続詞。
前の文脈から類推される結果とは逆の事がらが後に続く。
~だけど、~だと、それなのに、にもかかわらず。

(備考)
「雖然」は「しかれども」。
「雖若年」は「若年といえども」。
「雖未申通候」は「いまだ申し通せず候といえども」。

例1)『大乗院寺社雑事記』文正二年正月二十日条

細川・京極入道等、兼ハ可合力之由申之、望其期而違反、一向失弓矢之道之由・・・
 (細川(細川勝元)・京極入道(京極持清)等、かねては合力すべしの由と申すといえども、その期に臨みて違反、一向弓矢の道を失うの由・・・)

例2)『(天正元)十月二日付六角承禎感状写(川合文書)』

近年牢籠仁種々馳走共に祝着候、則可有奉公旨候条、先年以直書ヲ知行分遣置候、今度石部下野館江令籠城処、有入城被抽粉骨断、神妙ニ候間、最前充行知行ニ只今令加増、以目録加扶持候、

(書き下し文)
近年籠城の仁、種々馳走共に祝着に候。
則ち奉公有るべきの旨に候条、先年直書を以て知行分遣し置き候といえども、この度石部下野館へ籠城せしむるのところ、入城有りて粉骨抜きんでらるるの段、神妙に候間、最前宛行う知行に只今加増せしめ、目録を以て扶持に加え候。

奈・奈可・奈何・如何・・・いかん

(意味)
ことのなりゆき。様子。
または「どうであろうか」と疑問を表す際に用いる。
いかが。

委曲・・・いきょく

(意味)

詳しく細かなこと。また、物事の詳しい事情。
委細・詳細・巨細。

 (備考)

中世の古文書ではしばしば文章の終りの方で登場する。
「委曲〇〇可申候、(いきょく、〇〇申すべく候。)」などと用いる。

例文)『(大永元)十二月二十六日付六角定頼書状(朽木家文書)』

今度 (闕字)公方様御元服段銭之事、所々棟別申付候条、高嶋郡事同前候、委細對越中・田中申遣候間、時宜被示合、急度可被申付候、猶後藤但馬守可申候、恐々謹言、

(書き下し文)
この度 (闕字)公方様御元服段銭の事、所々棟別に申し付け候条、高島郡の事も同前に候。
委細に対し、越中・田中を申し遣わし候間、時宜を示し合わされ、急度申し付けらるべく候。
なお後藤但馬守申すべく候。恐々謹言。

幾日・・・いくか

(意味)

どれほどの日数。
何日。数日。

幾人・・・いくたり

(意味)
複数人の人を指す。
何人、数人。

幾許・幾多・幾何・幾程・・・いくばく・いくばかり・いかばかり

(意味)
どれほど、どんなにか。
推量の意味合いで、物事の具合や程度を測りかねるときに用いることが多い。

 (備考)
「いかばかり」は「如何計」と記されることが多いか。

例文) 『乃美文書』『武家事紀(元亀四年九月七日付織田信長書状写)』

甲州之信玄病死候、其跡之躰難相続候、駿州之今川多年信玄ニ被追出候而、北条を相頼、豆州ニ蟄居、此節此方江被走入之条、難黙止令許容候、駿州出張之儀馳走候、本意不可有幾程候、

(書き下し文)
甲州の信玄(武田信玄)病死に候。
その跡のていは相続き難く候。
駿州の今川(今川氏真)は多年、信玄に追い出され候て、北条を相頼み、豆州に蟄居。
かくの節此方へ走り入らるるの条、黙止もだし難く許容せしめ候。
駿州出張の儀は馳走に候。
本意いかばかりも有るべからず候。

去来・・・いざ

(意味)
「さあ」と誘う際に用いる語。

委細・・・いさい

(意味)
詳しい事情、詳細。
委曲・巨細。

 (備考)
例文) 『天正元年九月十七日付前波長俊書状(大瀧神社文書)』

就當寺領分儀、従平泉寺宿老中任御狀之旨、如前々年貢・諸済物等有取沙汰、佛供灯明修理勤行等可被相勤候、委細財嚴坊可被申候、恐々謹言、

(書き下し文)
当寺領分の儀に就きて、平泉寺宿老中よりの御状の旨に任せ、前々せんせんの如く年貢・諸済物等取沙汰あり、仏供・灯明を修理し、勤行等に相勤らるべく候。
委細財厳坊申さるべく候。恐々謹言

※諸済物(しょさいもつ)・・・租税などで上納する品物、貢物
※仏供(ぶく・ぶっく)・・・仏に供える物。おもに米飯。

聊・・・いささか

(意味)
質的・量的に少ないことを表す。
ほんのすこし。わずか。

 (備考)
同様の意味合いで、中古では「少なし」の方が多く用いられたようだ。
「いささかも」の形で使われる場合は、打消しの意味を伴い「少しも」の意を表す。

例文) 『(天正六)七月八日付山中幸盛書状(吉川史料館所蔵文書)』

永々被遂牢、殊當城籠城之段、無比類候、
於向後忘却有間敷候、
然者何へ成共可有御奉公候、
恐々謹言、

(書き下し文)
長々牢を遂げられ、殊に当城籠城の段、比類無く候。
向後に於いて聊かも忘却有るまじく候。
然らばいずれへなりとも御奉公あるべく候。
恐々謹言。

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