こんにちは~
今回は古文書の返読文字について書きます。
古文書を解読するにあたって返読文字は避けては通れません。
返読文字とは「以」や「自」など返って読む文字のことです。
「未然形」とか「助動詞」とか難しい単語は極力避けて、わかりやすくご説明します。
返読文字一覧については後日別記事に書きたいと思います。
返読文字 まず実際に本物の書状を見てみよう
これは以前記事にした元亀元年(1570)の志賀の陣で信長と浅井長政間で和睦が実現した時の書状。
朝倉義景との間に交わした文書と違う点も多々あるので、これは偽書ではないかという説もあるが・・・。
まぁ、今回はそういうことは置いといて。
関連記事:【古文書講座】信長窮地 織田家と浅井長政・朝倉義景が和睦したときの書状
この中で返読文字がどれになるのかおわかりだろうか。
漢字ばかりで何が何やらと思われる方もいるかもしれないが、この記事を最後まで読んでいただけると大体ご理解いただけると思う。
よくある返読文字は「可(べく・べき)」、「被(られ)」、「有(ある・あり)」、「無(なし・なき)」、「以(もって)」、「於(おいて)」、「仍・依・自(よって)」などだ。
返読文字ってなんであるの?
皆さん学校で習った通り、日本語は古代中国語からきている。
元々の日本列島で使われていた言葉と、中国語とでは言葉の文字配列が違っていたわけだ。
例えば
「私はあなたを愛しています」
という日本語を中国の文法でいえば、
我爱你(ウォーアイニー)
我(私は) 愛(愛しています) 你(あなたを)
となる。
そこで当時の古代日本人が文章では中国読みだけど、実際に話す言葉は日本語みたいな感じで返読文字というのができた。
中学校の古文の時間にレ点と一二点を習ったと思うが、昔の人はそんなものなくても読めたのだ。
“中国語と英語は似ている”
とはよく聞く話だが、古文書を見ているとそれがわかってくる。
(日)私は あなたを 愛しています
(中)我(私は) 愛(愛しています) 你(あなたを)
(英)I(私は) love(愛しています) you(あなたを)
こういうわけですな( ˘ω˘)
返読文字のよくある傾向
続いて返読文字の傾向について説明したい。
1.動詞っぽい単語はだいたい返読する
さきほど述べた「愛する」などの動詞形の単語の多くは返読する場合が多い。
他にも
可・・・べく
(意味)ある事柄について、それが可能となるように、あるいは実現されるように。~すべきみたいな感じ
被・・・られ、され
(意味)~なさる
令・・・しむ
(意味)~させる。~なさる、~あそばす。~させていただく
遣・・・つかわす
(意味)行かせる、使いとしてやる、つかわす、(物品を)おくる
尽・・・つくす
(意味)尽きるまでする。他のもののために、精一杯働く。尽力する。
などだ。
場合によっては返らない可能性がある点に注意。
動詞形の返り文字だけでこんなにある。
動詞形以外の返読文字はまだ別にある。
2.有り 無し 多い 少ない 肯定 打ち消しなどの単語はだいたい返読する
有り、無し、多い、少ない、肯定、打消しの場合もほぼ返読して読む。
例として
有・・・あり
(意味)有る、有り
無・・・なし・なく
(意味)無い
不・・・す、ず
(意味)~にあらず。否定形。
先に述べた「可(べく)」と合体すると「不可(べからず)」となる。
さらに「有」も合わさると「不可有(あるべからず)」となる。
(^-^;
非・・・あらず
(意味)そうではない
多・・・おおい・おおく・おおき
(意味)多い
少・・・すくない・すくなく・すくなき
(意味)少ない
などだ。
これはわかりやすいだろう。
3.前置きに用いる単語(前置詞) 文と文を繋ぐ役割の単語(接続詞)も返読する場合がある
「従(よって)〇〇は〇〇にて候」などが前置きになる単語。
これは今でも使うからわかりやすいだろう。
「然而(しかし)〇〇〇、〇〇〇にて候」などが繋ぐ役割の単語。
現在の日本語では「〇〇〇だ。しかしながら、〇〇〇である。」となるので、戸惑うかもしれないが、古文書では英語や中国語と同じように先にくる。
英語の「but」と同じ。
他にも
以・・・もって
(意味)前提を示す。~をもって
若・・・もし
(意味)かりに
尤・・・もっとも
(意味)道理に、ただし
剰・・・あまつさえ
(意味)そのうえに、それだけでなく、おまけに
為・・・ため、なす
(意味)「~のため」「~となす」
乍去・・・さりながら
(意味)しかしながら
然上者・・・しかるうえは
(意味)そうであるからには。もうこうなったからには
候得共、候共・・・そうらえども、そうろうども
(意味)~であるが
候間・・・そうろうあいだ
(意味)~でありますので
雖・・・いえども
(意味)~だけど、~だと
などだ。
「雖(いえども)〇〇〇、〇〇〇候」
という具合になるということ。
他にもあるが、大体は上記のようなパターンが返読文字になる場合が多い。
最後に返読文字のちょっとした問題でも・・・
①「有是」
ヒント なし
②「難有」
ヒント 難があるわけではない
③「不申及」
ヒント 「不」は否定形。しかしここでは”ふ”とは読まない
④「被仰付」
ヒント 「被」は受け身、受動態
⑤「無比類」
ヒント 古文書は訓読みで読む場合が多い
⑥「可然候」
ヒント 「可」は~すべきという意味
⑦「可申談候」
ヒント 送り仮名なんてなくても大体で読んだらいい
⑧「奉申上候」
ヒント ヒントなんてない。思い出すんだ
⑨「可被申上」
ヒント 順に返っていく
⑩「可加成敗者也」
ヒント 2文字目からスタートするパターンばかりではない
ご覧いただきありがとうございます。
古文書解読 よく出る単語集はこちらです。
古文書関連記事はこちらになります
答え
①これあり
②ありがたき
③もうすにおよばず
④おおせつけられ
⑤ひるいなき =他に例がないほど
⑥しかるべきそうろう
⑦もうしだんずるべくそうろう
⑧もうしあげたてまつりそうろう
⑨もうしあげらるべく
⑩せいばいくわうるべきものなり