戦国の古文書解読よく出る語彙・単語編 五十音順「さ」~「と」

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古文書解読の基本的な事 よく出る単語編 五十音順「さ」~「と」

 戦国時代の古文書で、非常によく出る語彙のみを選出しまとめました。
今後もさらに加筆する予定です。

  1. 「さ」行
      1. 閣、差置・・・さしおき・さしおく
      2. 差出、指出・・・さしだし・さしだす
      3. 差遣・・・さしつかわし・さしつかわす
      4. 沙汰・・・さた
      5. 定而、定・・・さだめて
      6. 扨・・・さて
      7. 扨措、扨置・・・さておき
      8. 沙法・・・さほう
      9. 乍去・・・さりながら
      10. 卅、丗・・・さんじゅう
      1. 仕合・・・しあわせ
      2. 不如・不若・・・しかず
      3. 然而、然、併・・・しかり、しかして
      4. 然者・・・しからば、しかれば
      5. 然上者・・・しかるうえは
      6. 然処・・・しかるところ
      7. 敷、舗・・・しく、しき
      8. 頻・・・しきりに
      9. 直状・直札・・・じきじょう・じきさつ
      10. 自署・・・じしょ
      11. 次第・・・しだい
      12. 地子銭・・・じしせん
      13. 仍執達如件・・・しったつくだんのごとし
      14. 仕廻・仕舞・・・しまい
      15. 令・・・しむ・せしむ
      16. 朱印状・・・しゅいんじょう
      17. 朱印銭・・・しゅいんせん
      18. 祝着・・・しゅうちゃく
      19. 状如件・・・じょうくだんのごとし
      20. 条々・・・じょうじょう
      21. 正文・・・しょうもん
      22. 諸公事・・・しょくじ
      23. 如才、如在・・・じょさい
      24. 書札礼・・・しょさつれい
      25. 書状・・・しょじょう
      26. 書状案・・・しょじょうあん
      27. 署判・・・しょはん
      28. 所務・・・しょむ
      29. 仁・・・じん、に
      1. 不・・・す、ず
      2. 進置・・・すすみおき・すすみおく
      3. 即・便・乃・則・・・すなわち
      4. 都而・・・すべて
      5. 墨引・・・すみびき
      1. 勢家・・・せいか・せいけ
      2. 誓詞・誓句・誓書・・・せいし・せいく・せいしょ
      3. 静謐・・・せいひつ
      4. 令・・・せしむ、しむ
      1. 疎意・・・そい
      2. 無疎意・・・そいなき・そいなく
      3. 草案・・・そうあん
      4. 忩劇・怱劇・・・そうげき
      5. 惣村・・・そうそん
      6. 候而者・・・そうらいては
      7. 候得共、候共・・・そうらえども、そうろうとも
      8. 候・・・そうろう
      9. 候上者・・・そうろううえは
      10. 候条・・・そうろうじょう
      11. 候間・・・そうろうあいだ
      12. 相論・争論・・・そうろん
      13. 相論裁許・・・そうろんさいきょ
      14. 副状・添状・・・そえじょう
      15. 誹、謗・・・そしり
      16. 袖判・・・そではん
      17. 備・・・そなえる、そなえ
      18. 其上、其外、其段、其故・・・そのうえ、そのほか、そのだん、それゆえ
      19. 抑・・・そもそも
  2. 「た」行
      1. 代官・・・だいかん
      2. 対・・・たいして
      3. 出・・・だす・だし・いで
      4. 達・・・たっす・たっし
      5. 達而、達・・・たって、たっての
      6. 縦令、縦、仮令、仮・・・たとえ・たとい
      7. 奉・・・たてまつる、たてまつり
      8. 為・・・~のため、~たる、~として
      9. 給・・・たまう、たもう
      10. だに・・・だに
      11. 頼母敷・・・たのもしく、たのもしき
      12. 段銭・田銭・・・たんせん
      13. 段別・反別・・・たんべつ
      1. 知行・・・ちぎょう
      2. 馳走・・・ちそう
      3. 誅・・・ちゅうす
      4. 忠節・・・ちゅうせつ
      5. 停止・・・ちょうじ・ていし
      6. 調儀・・・ちょうぎ
      7. 打擲・・・ちょうちゃく
      8. 調物・・・ちょうもつ
      9. 智略、知略、智謀、知謀・・・ちりゃく、ちぼう
      10. 珍重・・・ちんちょう
      1. 就・・・ついて・つきて
      2. 付而、付・・・ついて、つき
      3. 仕度・・・つかまつりたく
      4. 遣・・・つかわす・つかわし
      5. 次・・・つぎに、ついで
      6. 付状・・・つけじょう
      7. 尽・・・つくす・つくし・つき
      8. 具・・・つぶさに
      1. 而・・・て
      2. 為躰・為躰・・・ていたらく
      3. 行・・・てだて
      4. 伝奏書・・・でんそうがき
      1. 等閑・・・とうかん
      2. 逼塞・・・とうそく
      3. 当知行・・・とうちぎょう
      4. 當手(当手)・・・とうて
      5. 同名中・・・どうみょうちゅう
      6. 遂・・・とげ、ついに、つい
      7. 所質・・・ところじち
      8. 都鄙・・・とひ
      9. 取出・・・とりで
      10. 取・・・とる・とり

「さ」行

閣、差置・・・さしおき・さしおく

(意味)~を差し置き、差し置いて

 (備考)「閣私意趣」で「私の意趣をさしおき」と読む。

差出、指出・・・さしだし・さしだす

(意味)提出する。物や書類に限らず、土地・知行を含まれることもある

差遣・・・さしつかわし・さしつかわす

(意味)使者や軍勢を出すこと。派遣する

 (備考)「可被差遣」で”差し遣わさるべく(べき)”

沙汰・・・さた

(意味)処理すること。行動すること。決裁すること。取り上げること。

 (備考)「無沙汰」は怠慢で義務を怠ること。「沙汰之限さたのかぎり」はもうどうしようもないこと。

定而、定・・・さだめて

(意味) 必ず、きっと、まちがいなく

扨・・・さて

(意味)それで、ところで

扨措、扨置・・・さておき

(意味)それはそれとして。ひとまずそれは置いといて

沙法・・・さほう

(意味)作法のこと。しきたり。きまり。

乍去・・・さりながら

(意味)しかしながら

 (備考)「乍」単独では「ながら」。

卅、丗・・・さんじゅう

(意味)三十。30

 (備考)卅匁や卅俵など、昔は金額や数量をこのような漢数字で、年月日を漢数字で記す傾向にあった。
例)「金子疋贈給候、」(金子三十ひき贈り給い候。)

仕合・・・しあわせ

(意味)幸運、幸せ。

 (備考)「難有仕合」だと「ありがたき幸せ」

不如・不若・・・しかず

(意味)~に及ばない、~に匹敵できない

 (備考)「AはBにしかず」なら、「AはBに及ばない」、「Bの方が良い」となる

然而、然、併・・・しかり、しかして

(意味)そうだよ(便乗)

 (備考)「雖然」は「しかれども」と返読になるので注意。

然者・・・しからば、しかれば

(意味)それならば。そうであるからには

然上者・・・しかるうえは

(意味)そうであるからには。もうこうなったからには

然処・・・しかるところ

(意味)ところが、しかし。

敷、舗・・・しく、しき

(意味)物を地や底などに敷くこと。
陣を敷く際にも用いられる。
また、「裏山敷」(うらやましく)などと表現されることもある。

頻・・・しきりに

(意味)その程度が並み並みでないさま。しばしば・たびたび

 (備考)現在でも使う表現ですが、昔はこの文字1字で”しきりに”と読んだ。
“頻に”と表現する場合もある。

直状・直札・・・じきじょう・じきさつ

(意味)武家文書で、書状と同じく発給者が宛名人に直接意思伝達を目的として文面に署判し、年月日を記入し、命令の下達、権利の附与、認定など種々の用途で発給する文書を総称してこう呼んだ。
したがって、直状は書状の変形した文書形式を有し、奉者が命をうけたまわって発給する奉書(ほうしょ)とは対立する概念である。

 (備考)
「仍状如件(仍って状くだんの如し)」・「之状如件(~の状くだんの如し)」・「・・・也(~なり)」などの書留文言(かきとめもんごん)を用い、発給者の署判の位置は袖、日下、日下の別行、奥上などさまざまである。
( 日下や奥上などの語彙は 「署判・・・しょはん」の項をご参照されたい)

参考:『花押・印章図典(吉川弘文館)』・『室町・戦国時代の法の世界(吉川弘文館)』など

自署・・・じしょ

(意味)現在の公文書の本文は通常書記官が書くが、その関係者が責任の所在を明らかにするため、自分の実名だけを自筆で書く。
これが自署であって、古文書の世界も同じである。
武家文書では自署に花押(かおう)を多く用いたが、その結果花押の有無が正文(しょうもん)案文(あんもん)を決定するかに説かれる場合がある。
しかしながら、宛所と発給者の関係性や地位の違いにも大きく左右されるため、必ずしもこの判断基準が正しいわけではない。

 (備考)今日でも公文書では自署か自筆で大きな違いがあるのは、こうした流れがあるからであろう。
自署は自分で自分の名前を書くこと。
自筆は自分が書くこと。またはその書類。自書。

次第・・・しだい

(意味)順序、事情、筋道、いきさつ

地子銭・・・じしせん

(意味)貸地代。
戦国時代後期になると、大名が商工業者を城下へ集住させる政策がとられ、その特典として地子銭免除の措置がたびたび取られた。

仍執達如件・・・しったつくだんのごとし

(意味)「以上が誰々様の御意向である」

 (備考)禁制や制札などの文書の最後の方に用いられる傾向にある。

仕廻・仕舞・・・しまい

(意味)しまうこと、片付けること。

令・・・しむ・せしむ

(意味)~させる、~をなさる、~をあそばす、~させていただく、

 (備考)動詞の「Do」のような位置づけ。まれに返読文になるときがあるので注意。

朱印状・・・しゅいんじょう

(意味)権力者が花押の代わりに朱印を捺した公的な文書のこと。
朱印で捺したものを朱印状、黒印で捺したものを黒印状。
これらを印判状(いんばんじょう)と呼んだ。

判物と印判状のちがい

判物と印判状のちがい

朱印銭・・・しゅいんせん

(意味)朱印状をもらいうけるのに、発給者へその対価を払うべき金銭のこと。

祝着・・・しゅうちゃく

(意味)喜ばしいこと

状如件・・・じょうくだんのごとし

(意味)書留文言(かきとめもんごん)の一つで「この件は以上の通りである」の意。
制札や目下の者に対してよく用いられるいわば決まり文句。
「如」が返読文字になっているので、語順が異なる。
同じような意味で「仍如件(よってくだんのごとし)」、「執達如件(しったつくだんのごとし)」などがある。

条々・・・じょうじょう

(意味)一つ一つの箇条

正文・・・しょうもん

(意味)正式の文書、宛所に出された文書のこと。

 (備考)コピーされた正文のうち、文書に本質的な効力があるものを「あん」・「案文(あんもん)」と呼ぶ。
効力がないものは「写(うつし)」である。
これに対して下書を「土代どだい」・「そう草案)」と呼ぶ。

諸公事・・・しょくじ

(意味)対象となるさまざまの「公事(くじ)」。
すなわち年貢以外の金品や業務を一まとめにしていう語。

如才、如在・・・じょさい

(意味)形ばかりでいい加減にすること。なおざりにすること。手抜かり。気を使わないために生じた手落ちがあること

 (備考)この字の後に否定の語が続くことが多い。
無如在(如在無く)・無疎意(疎意無く)・無等閑(等閑無く)
これらは先方を疎略には扱わない、今後とも昵懇に願う旨の意味である。


  (例文)
如在申間敷旨候間、
 (如才申すまじき旨に候間、)
   =口ごたえを申してはいけないという旨なので、

  (推定天正十九年)七月二十二日付前田利家書状より抜粋

書札礼・・・しょさつれい

(意味)書札(書状)をはじめ、院宣いんぜん綸旨(りんじ)・令旨(りょうじ)・御教書(みぎょうしょ)などの広く書札様しょさつよう文書を作成するのに際して、守らねばならない儀礼(書札)と故実をいい、また、そのことについて述べた書物も書札礼と呼ぶ。

 (備考)
公式令くしきりょうには、詔書(しょうしょ)・勅旨(ちょくし)などの公式様文書の書式と、平出(へいしゅつ)・闕字(けつじ)・印制・文字など文書作成に関する諸規定がみられる。
これらの公文書に対して、私文書たる書札は、奈良時代にはけいじょうといわれ、これは中国の六朝以来の私信としての系譜を汲んでいる。
当初は鷹揚な決まりであったが、平安時代末期に藤原(中山)忠親の著わした『貴嶺問答きれいもんどう』(群書類従 消息部)あたりからしだいに厳格なものとなっていった。

中でも鎌倉時代になると『書札礼付故事』(群書類従 消息部)や『弘安礼節こうあんれいせつ』(同雑部)が撰定されると、大臣・大納言・中納言・参議・蔵人頭くろうどのとう以下それぞれの在任者が、他の官職を有する相手に書札を出すとき守るべき書札を述べたもので、勅撰という権威のもとに、のちの世へまで長く続く書札礼の基準となった。

書状・・・しょじょう

広義でいう手紙のこと。
用件・意志・感情などを書き記して相手方に伝える私的な文書のこと。
他に書簡・書翰(しょかん)・書札(しょさつ)・尺牘せきとく・消息(しょうそく・しょうそこ)・消息文などと呼ばれる。
これらのうち、漢文体のものを尺牘といい、仮名書きのものを消息ということが多い。
わが国では時代が進むにつれて「はべり」・「たもう」などの言葉を交えた和風漢文体が普及し始め、さらに平安時代末期頃までには「そうろう」を用いた文体が成立。
また、書留文言(かきとめもんごん)も「恐々謹言(きょうきょうきんげん)」などに規格化され、しだいにその区別は薄れていった。

 (備考)
戦国時代に入ると書札形式は複雑化しており、一見すると書状なのか書下(かきくだし)なのか区別できないことが増えてきた。
多くは前述したように私的な文書かそうでない文書かで大別する。
そこで、年紀(付年合(つけねんごう)・干支を含む)がはじめから付されているか否か、実名(自署)だけか、それに花押(かおう)・印章を加えているかどうかが一つの基準とされているが、これも必ずしも絶対的なものではない。
参考:『花押・印章図典(吉川弘文館)』・『史料を読み解く1 中世文書の流れ(山川出版社)』など

書状案・・・しょじょうあん

(意味)書状の下書き、あるいは控え。案書あんしょ案文(あんもん)ともいう。
正確には「正文(しょうもん)」のコピーのうちで、効力のあるものを指す。

 (備考)案文は法令・命令布達のために大量に作成される場合、訴訟の証拠文書としてコピーを提出される場合、所領を分割する際、その土地の権利関係文書のコピーといった重要な文書の場合に作成される場合が多い。
一方、正文のコピーで、効力の無いものは「うつし」である。
参考『史料を読み解く1 中世文書の流れ(山川出版社)』・『花押・印章図典(吉川弘文館)』

署判・・・しょはん

(意味)元来は花押(かおう)と同一の意味を持っていたが、時代が進歩するにつれて次第に異なるものとなった。
判は花押のことであるが、署名という点で微妙な差異がある。
署名は自署(じしょ)に限る。(姓は無関係)
自署は自分で自分の名前を書くこと。
自筆は自分が書くこと。またはその書類。自書。

奈良時代は自署を楷書体で書く習わしであったが、次第に行書から草書へ、草書から完全なる花押へと変化していった。
しかし、鎌倉時代中期の版刻花押の出現によって、花押と印章の判別困難な文書が現れはじめ、中世末期には代筆による花押のほかに、花押の外郭を線刻してそれを捺し、外郭線内部を墨をうずめて代用花押とする花押衰退期を迎えた。
これが進むと署判よりも印判(印章)が優先する近世に入り、署名押印様式の現在に至った。

 (備考)年月日の記した部分の下に書く場合は日下(にっか・ひのした)の署判と称し、年月日の次行の上部に書く奥上署判(おくうえしょはん)、年月日の次行の下部に書く奥下署判(おくしたしょはん)、文書の右端の余白(袖)に花押のみを書く袖判(そではん)などがある。
こうした微妙な違いは、書札礼(しょさつれい)によって決められている。
奥上署判の文書は、日下署判・袖判の文書に比べて厚礼なものであって、社寺宛の文書などにみられた。

さらに、室町幕府奉行人の奉書は、堅紙(たてがみ)と折紙(おりがみ)の二つがあるが、本奉行・合奉行あいぶぎょうの連署の複数の署判が多い。
堅紙奉行は官名・受領名(ずりょうめい)を書いた官途書(かんとがき)であり、折紙は実名(じつみょう)書きである。
折紙は略式署判を意味する。
この微妙な違いは、連署による地位の上下は奥(文書の左方)を尊ぶ思想から前後を決めるが、孔子くじ次第は次第不同様式として南北朝以降に行われ、さらにはつぶら連判・からかさ連判などが中世後期から近世にかけて行われた。
※本項の大部分は 瀬野精一郎(2018)『花押・印章図典』吉川弘文館 から抜粋

所務・・・しょむ

(意味)職務、役目、領内の政治、

仁・・・じん、に

(意味)人、御仁。まれに「~に」の場合もある

不・・・す、ず

(意味)~にあらず。否定形

 (備考)返読文字=戻って読むものなので注意

進置・・・すすみおき・すすみおく

(意味)すすめておいて、とりあえずすすめて

 (備考)「可進置」は「すすみおくべく」と読む。

即・便・乃・則・・・すなわち

(意味)
①すぐに
②そこで、その時
③・・・ならば、そうだから、その時には

都而・・・すべて

(意味)全て、全部

墨引・・・すみびき

(意味)書状の封じ目のこと。
紙紐で巻いた分の幅分の墨付きがないため、「― ―」のような跡がつく。

墨引①
墨引②

上の下では書状の形式が違うが(上図は折紙形式、下図は堅紙形式)、墨引跡はこのような感じでつく。

勢家・・・せいか・せいけ

(意味)権勢のある家格・門閥・官位官職を有する家、または集団を指す。
権門(けんもん)と同義。

誓詞・誓句・誓書・・・せいし・せいく・せいしょ

(意味)神々の前で誓約する内容を書き記した文書。
起請文(きしょうもん)のこと。
和睦の際や、大名間での縁組が決まった際、家臣団に忠誠を誓わせる際などに用いられた。
護符の裏に書くのが通例で、ここから誓詞を書くことを「宝印を翻す」などと表現した。

 (備考)
基本的に誓詞は「前書き(前文)」と「神文(罰文)」によって構成される。
まず、文書の柱書(タイトル)として、「起請文ノ事」などという文言が入る。
次に続く分が、誓約内容となる「前文」。
その後に「この内容に偽りがあるようであれば神々の御罰を蒙る」といった内容の「罰文」が入る。
罰文の部分は、自らが信仰している神や仏の名を記すが、キリシタンの場合はそこにデウスなどが入ることもあった。

静謐・・・せいひつ

(意味)世の中が穏やかに治まっていること
 (備考)戦国時代の外交文書では割とよく出る。「天下弥静謐に・・・」などと用いられることが多い。

令・・・せしむ、しむ

し項の「しむ」を参照

疎意・・・そい

(意味)避けようとする気持ち、遠ざけようとする気持ち

無疎意・・・そいなき・そいなく

(意味)決して粗略には扱わぬという意味。重く用いるということ。

 (備考)書状に書かれている際は、如在(じょさい)・疎意(そい)と似たような意味合いの場合が多い。
如在(如在無く)・無疎意(疎意無く)・無等閑(等閑無く)
これらは先方を疎略には扱わない、今後とも昵懇に願う旨の意味である。

草案・・・そうあん

(意味) 「正文(しょうもん)」の下書のこと。
土代どだい」とも呼ぶ。

 (備考)
混同しやすいポイントではあるが、正文のコピーのうちで、本質的な効力があるものを「あん」・「案文(あんもん)」と呼び、そうでないものが「うつし」である。

忩劇・怱劇・・・そうげき

(意味)混乱すること。忙しく落ち着かないこと。

 (備考)


一、信州御料所之儀、近年忩劇故、不奉運上候、失面目則一所可奉献之候、
 (信州御料所の儀、近年忩劇ゆえ、運上奉らず候。面目を失い則ち一所奉るべくこれを献じ候。)
  信州御料所の件は、近年動乱状態にあったため運上金を送れず面目を保てませんでしたが、再びこの地を(幕府へ)献上致します

   『石川県立図書館所蔵文書「雑録追加 三(九月二十六日付武田信玄書状写)」』より抜粋

惣村・・・そうそん

(意味)中世日本における百姓の自治的・地縁的結合による共同組織(村落形態)を指す。
惣ともいう。
畿内を中心に、百姓中による意思決定や村有財産の存在など、法的主体性を有する場合もあった。
特に足利幕府の影響が強い畿内近国では「同名中(どうみょうちゅう)」という在地領主の一族に、百姓上層も加えた疑似的同族集団による支配組織も成立した。
甲賀地方の山中氏などがその例である。

候而者・・・そうらいては

(意味)~しては

候得共、候共・・・そうらえども、そうろうとも

(意味)~であるが

候・・・そうろう

(意味)今日の「です」「ます」に当たる言葉。文の区切り。

 (備考)明治以降から徐々に「である」調の文語一致体が浸透しはじめ、戦後ほどなくして「候」が死語となるのである。

候上者・・・そうろううえは

(意味)~したうえは、~の上は

 (備考)「者」が助詞の~はとなる。

候条・・・そうろうじょう

(意味)「条」だけの場合もある。

候間・・・そうろうあいだ

(意味)~でありますので

相論・争論・・・そうろん

(意味)紛争すること。
特に中世日本では喧嘩・人返ひとがえし・所領問題・山野の用益・水利権がしばしば争論の種となった。

相論裁許・・・そうろんさいきょ

(意味)権力者が相論を公の権力を以て裁き、解決へ導くことを指す。

副状・添状・・・そえじょう

(意味)中世日本では権力者が発給する本文書に加えて、側近や一門、あるいは家老衆がそれを裏付ける書状を作成して送る風習があった。
権力者が発給する正規の文書だけでは正当な効力があるといえず、副状とセットとなって初めて意味を持つものであった。
それは、権力者の行動が家中全体の総意であるとする裏付けになったのだろう。

誹、謗・・・そしり

(意味)他人をそしる。悪口

袖判・・・そではん

(意味)通常は文書の本文を書き終え、月日の付近に花押を据えるが、袖判の場合は文書の右端の余白部分に花押を据える。
この右端余白部分が書状の袖にあたるところからこの名がついた。

袖判はちょうど④のあたりに花押を据えることになる。

これは、書札礼(しょさつれい)を意識して、奥上・奥下・日下判に対応するために行われた。(奥上・奥下・日下については「署判(しょはん)」の備考欄をご参照されたい。)
右筆(ゆうひつ)書きの文書でも変わらぬ効力を持たせるために、また、発給者の責任表示をするためにこのような書札礼が生まれたと考えられる。
袖判下文そではんしたぶみ袖判下知状そではんげちじょう袖判奉書そではんほうしょ袖判御教書そではんみぎょうしょ袖判庁宣そではんちょうせんなどが存在する。

 (備考)袖判が奥上・奥下・日下に比べていささか尊大な書式であったのはこのためである。
参考文献:『史料を読み解く1 中世文書の流れ(山川出版社)』・花押・印章図典(吉川弘文館)』など

備・・・そなえる、そなえ

(意味)前もって用意する。そなえる

其上、其外、其段、其故・・・そのうえ、そのほか、そのだん、それゆえ

(意味)さらに、それに加えて、その件

抑・・・そもそも

(意味)そもそもの始まりは~などと発端の前置詞として用いられることが多い

「た」行

代官・・・だいかん

(意味)直轄地において、主君の代わりに領内政治、統治を行う地方官

対・・・たいして

(意味)たいする、たいして

出・・・だす・だし・いで

(意味)出る、出す

達・・・たっす・たっし

(意味)~に至る、達成する

達而、達・・・たって、たっての

(意味)どうしても、強いて

縦令、縦、仮令、仮・・・たとえ・たとい

(意味)例え、例えば

 (備考)例をあげると


去程に、常々奥方などのことをばいかでか存知候べき、縦令(たとい)ば表なりとも我と見ざること多かりけれ。

(さて、常日頃、奥方などのことを如何に伺い知ることができようか。
例え表向きのことであっても、見えないことが多いだろう。 )

  政宗記「政宗一代之行儀」より

奉・・・たてまつる、たてまつり

(意味)差し上げる、献上する。~になる。または~申し上げる

 (備考)「奉申上候もうしあげたてまつりそうろう」のように、返読文字になる場合も多い

為・・・~のため、~たる、~として

(意味)~のため、~たる、~として

 (備考)返読文字に用いられるので注意

①「~のため」の場合の例


「天下之儀信長加異見刻、遠国之仁上洛之事、且者京都、且者信長、尤候歟、」
 (天下の儀信長意見を加うるきざみ、遠国のじん上洛の事、且つは京都のため、且つは信長のためもっともに候か。)

  『小早川家文書(小早川隆景宛五月二日付織田信長書状)』より抜粋

②「~たる」の場合の例


「其表事長々籠城之衆、可窮困候歟、」
 (その表の事、長々籠城の衆、窮困たるべく候か。)

  『顕如上人御書札案留(浅井久政宛六月三十日付顕如書状案)』より抜粋

③「~として」の場合の例


「中嶋、高屋表調儀之子細候間、行柴田修理亮差上候、」
 (中嶋・高屋表調儀の子細に候間、てだてとして柴田修理亮(柴田勝家)差し上せ候。)

  『実相院及東寺宝菩提院文書(飯川信堅・曽我助乗宛正月二十一日付織田信長書状)』より抜粋

給・・・たまう、たもう

(意味)もらう、授かる、賜わる、目上の人から戴く

だに・・・だに

(意味)~でさえも、~でさえ、~ですら

 (備考)戦国時代の和歌で散見されるので載せた。例として


さらぬだに打ちぬる程も夏の夜に別れを誘うほととぎすかな
 (さらぬだに 打ちぬる程も 夏の夜に 別れを誘う ほととぎすかな)

   小谷御前(お市)辞世の句

関連記事:和歌や俳句でよく詠まれる「ほととぎす」にはどのような意味が隠されているのか

頼母敷・・・たのもしく、たのもしき

(意味)「頼もしい」の連用形

 (備考)「頼母」だけで”たのも”と読む。

段銭・田銭・・・たんせん

(意味)室町幕府が臨時に諸国の田地の段別高に応じて課した税銭。
守護・戦国大名も課し、戦国時代には恒久税になり、年貢の付加して課せられた。

段別・反別・・・たんべつ

(意味)一つ一つの田に対して農民に課せられる賦課税のこと。
段銭と同意。段別銭ともいう。

知行・・・ちぎょう

(意味)年貢の収取など土地の支配と用益を指す。
扶持ふち(給料)ではなく、土地の支配権。

 (備考)
不知行(ふちぎょう)当知行(とうちぎょう)

馳走・・・ちそう

(意味)走り回ること。奔走。食事を出すなどして客をもてなすこと

 (備考)現在では自分からもてなすときにのみ用いられるが、昔は目上の者が「馳走せよ」と上から目線で用いられることが普通であった。

誅・・・ちゅうす

(意味)罪あるものを殺すこと。謀りごとをもって殺すこと

忠節・・・ちゅうせつ

(意味)主君などに忠義を尽くすこと

停止・・・ちょうじ・ていし

(意味)差し止めること。やめさせること。

調儀・・・ちょうぎ

(意味)策を練ること。兵を出して攻めること。

打擲・・・ちょうちゃく

(意味)打ちのめされること。殴ること。

調物・・・ちょうもつ

(意味)貢物。貢物として納める品物。

智略、知略、智謀、知謀・・・ちりゃく、ちぼう

(意味)智慧ちえを働かせること、はかりごと、謀略

珍重・・・ちんちょう

(意味)めでたいこと、祝うべきこと。または珍しいものとして大切にすること

就・・・ついて・つきて

(意味)おもむく。つきしたがう。つく。仕事にとりかかる。

 (備考)「就御上洛刻、」=”御上洛のきざみに就きて”

付而、付・・・ついて、つき

(意味)おもむく。つきしたがう。つく。仕事にとりかかる。

仕度・・・つかまつりたく

(意味)~致しの未然形・連用形。

遣・・・つかわす・つかわし

(意味)行かせる、使いとしてやる、つかわす、(物品を)おくる


  (例文)
辞令 御用有之米国ヘ被差遣候事
 (辞令、御用これ有り米国へ差し遣わされ候の事)

   (辞令他 明治9年5月以降 宮内省より)

次・・・つぎに、ついで

(意味)すぐあとに続くこと、順序・順位がすぐあと

付状・・・つけじょう

(意味)「披露状(ひろうじょう)」と同意。こちらをご参照のこと。

尽・・・つくす・つくし・つき

(意味)尽きるまでする。他のもののために、精一杯働く。尽力する。

具・・・つぶさに

(意味)詳細に、詳しく。


(例文)
理共聞届候
 (ことわりともに、つぶさに聞き届け候)

  (元亀四年二月二十九日付け織田信長書状) より抜粋

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而・・・て

(意味)~をして(助詞)

 (備考)今日では「じ」と読み、ほんの稀に用いられているが、昔は「~て」の方が一般的であった

為躰・為躰・・・ていたらく

(意味)物事の様子、あり様を表す。
書状ではネガティブなニュアンスや自嘲を込めた表現で用いられることが多い。

 (備考)
以下の例文は、三方ヶ原合戦での敗戦を指す。


今度浜松表不慮之為躰候、
 (このたび浜松表不慮のていたらくにて候。)

  『諸家感状録 廿六(正月二十日付織田信長判物写)』より抜粋

行・・・てだて

(意味)手段、対策、あるいは実際に攻め込むこと。

伝奏書・・・でんそうがき

(意味)「披露状(ひろうじょう)」と同じ。こちらをご参照のこと。

等閑・・・とうかん

(意味)いい加減にすること。おろそかにすること。なおざりにすること。

 (備考)書状に書かれている際は、如在(じょさい)・疎意(そい)と似たような意味合いの場合が多い。
如在(如在無く)・無疎意(疎意無く)・無等閑(等閑無く)
これらは先方を疎略には扱わない、今後とも昵懇に願う旨の意味である。

逼塞・・・とうそく

(意味)ひきこもること。姿を隠すこと。刑罰の一つ。武士や僧に科された謹慎刑。
門を閉じ、昼間を出入りを禁じられた。「蟄居」や「閉門」と似ている

当知行・・・とうちぎょう

(意味)その知行地を正当に所有する権利を有する者が、現実にその土地を支配すること。
また、その権利の解釈をめぐって他者と対立し、現地を実力で支配すること(自力救済)。
見方によっては横領になり得る。

 (備考)
⇔知行の権利を有するが、実際には実現していないことを不知行という。

當手(当手)・・・とうて

(意味)当方の軍勢など

同名中・・・どうみょうちゅう

(意味)中世後期から現れた同姓武士団の団結組織。
とびぬけて支配力の強い権力者のいない地域では、同姓者が集まって惣村(そうそん)をつくり自治を行った。
これを同名惣(どうみょうそう)あるいは同名中惣(どうみょうそうちゅう)と呼ぶ。
百姓上層も加えた疑似的同族集団による支配組織も成立した。
甲賀地方の山中氏などがその例である。

遂・・・とげ、ついに、つい

(意味)目的を達成する。とうとう。
 (備考)「同十三日夜中切懸遂一戦」=”同十三日、夜中に切り懸り一戦を遂げ”

所質・・・ところじち

(意味)その場所で抵当権を執行すること。
債権者が債務者に対して質取(私的差し押さえ)行為を行うこと。

都鄙・・・とひ

(意味)都会と田舎。日本国中。あるいは京都と地方とを比較する際に用いる。
 (備考)地方に住する者が、自らをへりくだって表現する際に用いる場合もある。

取出・・・とりで

(意味)砦のこと。要塞

取・・・とる・とり

(意味)取る

来世ちゃん
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