こんばんは~。
今回の記事は古文書の初歩である「かな文字」です。
かな文字とは漢字を元にした文字のことです。
古文書に興味があるけど難しすぎる~!
という方は、まずはかな文字から勉強してみると入りやすいかもしれません。
- 古文書が好きだけど学習が行き詰まっている
- 古文書解読を独学で進めたい
- 古文書で女の子にモテモテになるって本当ですか?
古文書の学習はなかなか難しい
古文書解読の入門書は大手書店に数多く揃えられている。
それ以外にも図書館や通信講座、私塾等でも学習できる。
しかしながら、まずは「これを完璧にマスターしろ」といわんばかりにジャブを出してくる。
な行 | た行 | さ行 | か行 | あ行 |
な | た | さ | か | あ |
奈・那 | 太・多・堂 | 左・佐 | 加・可 | 安・阿 |
に | ち | し | き | い |
仁・爾(尓)・丹・耳 | 知・遅 | 之・志 | 畿・起 | 以・伊 |
ぬ | つ | す | く | う |
奴・怒 | 川・徒・津 | 寸・春・須・寿 | 久・具 | 宇 |
ね | て | せ | け | え |
年・祢 | 天・帝・亭 | 世・勢 | 計・介(个)・希・遣・気 | 江・衣 |
の | と | そ | こ | お |
乃・農・能 | 止・登 | 曽・楚 | 己・古 | 於 |
わ~ん | ら行 | や行 | ま行 | は行 |
わ | ら | や | ま | は |
和・王 | 良・羅 | 也・屋 | 末・満・万 | 波・八・者・盤 |
ゐ | り | み | ひ | |
為・井 | 利・里・梨 | 美・見 | 比・飛 | |
ゑ | る | ゆ | む | ふ |
恵・衛 | 留・流・類・累 | 由・遊 | 武・無・尤 | 不・婦・布 |
を | れ | め | へ | |
遠・越 | 禮・連・礼 | 免・女 | 部・遍 | |
ん | ろ | よ | も | ほ |
无 | 呂・路 | 与・餘 | 毛・裳 | 保・本 |
この時点で心が折れて投げ出しす方もいらっしゃるかもしれない。
かくいう私もその一人だ。
私の場合は、いきなり候文にチャレンジして撃沈し、古文書解読入門の書籍を購入して上記の表でノックアウト。
しかし、何度も挫折→復活を繰り返しながら、どうにか独学だけでここまで覚えることができた。
関連記事:【古文書講座】将軍義昭挙兵 和平を望む信長が細川藤孝に宛てた書状を解読
独学のため、いろいろなことを不規則に覚えてしまっている。
決して効率の良い学習法ではないが、私のように自分が興味のあるところから始めるのも悪くないかもしれない。
あくまで私の主観だが、古文書解読の難易度的には
絵本などの仮名文字<大衆小説<<裁判などの公文書<大名間の公文書<<完全に私的なお手紙<<<<<女房奉書
といった感じだ。
今回の記事は一番初歩の初歩・絵本などの仮名文字から学べばどう?といった内容である。
一度で吸収する必要はない。
独学ならばなおの事、モチベーションの維持が重要だ。
かな文字の歴史を簡単に
思えばつい60年ほど前までは普通にみんな使っていた文字だ。
意外かもしれないが、江戸時代中期から後期にかけて日本の識字率が大幅に向上し、明治を迎える頃には世界トップレベルだったといわれている。
庶民であっても、ある程度の文字の読み書きができたことが、明治維新になってわずか一世代で西欧に追いつくほどのテクノロジーと工業力を習得する原動力になったといっても過言ではないだろう。
明治の教育令でひらがな、カタカナがそれぞれ1種類ずつに限定されるなど、国学の大幅な改革が施行されたが、それでも脈々と「~で候」といったような候文(そうろうぶん)は残った。
例えば、
「波」→「は」 ひらがな
「八」→「ハ」 カタカナ
といったように、幾度にもわたる明治の教育改正により、ひらがな、カタカナでそれぞれ1種類ずつになったのである。
「は」でこれまで普通に使用されてきた「者」、「盤」などの字は用いられなくなっていった。
この用いられなくなった文字を変体仮名という。
また、候文の代表例として頻出するワードの一つに「可被下候」(くださるべくそうろう)がある。
このような漢文交じりの候文は明治の教育改正を経ても、大正、昭和と公私問わず脈々と使用されてきた。
候文が終わりを迎えたのは、大東亜戦争(太平洋戦争)の敗戦により、欧米の社会体制が急速に浸透してからだった。
私が確認した限りでは、最後に確認できる公的な文書での候文は、昭和22年(1947)のものだ。
候文の終わりは、新たな日本語のスタイルを生み出す時代の転換点でもあったのだ。
江戸時代の子供たちはどのようにして文字の読み書きをマスターしたのか
江戸時代の庶民たちも始めから漢文や候文を読めたわけではない。
彼らは、子供の頃に寺子屋で仮名文字を学習してから、ふりがなを頼りに草書体にくずして記された漢字の文章を学んだ。
一部の国語の才がある者や、裕福な武士・商人は、漢詩などに親しむなどして公的な文書の読み書きをマスターしたのだ。
明治時代初期の国語の教科書からかな文字を学ぶ
これは明治15年前後の一般の小学校の教科書である。
この頃は明治の学校教育が過渡期の段階で、普通に読める部分もあれば現在のひらがな、カタカナにはない文字もある。
文字は難しいかもしれないが、書いてる内容は非常に簡単で当たり前の話だ。
では、難しい部分を解説していこう。
なお、塩という字は私が注釈を加えた。
ここで注釈を入れたこれらの文字は全て変体仮名で、現在は用いられなくなった文字だ。
だが、昔の人々にそのような感覚はなく、同じくらいの頻度で自由に使っていた。
訳すと
“川の水には塩気なく、海の水には塩気あり。
食塩は大方海の水より採る。
又、山より出づるもあり。
塩なければ人々生を保ち難し。”
となる。
書いている内容自体は本当に小学校で習うようなことだ。
まずは2~5文字の単語で古文書の学習をしてみる
今の小学校の仮名文字でも難しいと感じた方もいらっしゃるだろう。
焦ることはない。
単語単語で区切って覚えれば、しだいに理解を深められるだろう。
まずは2文字からいってみよう!
①
②
③
④
⑤
⑥
こたえ
①可者(かは)
②ふじ・・・と見せかけて尓之゛(にじ)
(之のくずし字がひらながの「し」)
③久春゛(くず)
(久のくずし字がひらがなの「く」)
④尓者(には) これはよく出る
⑤不年(ふね)
(不のくずし字がひらがなの「ふ」)
⑥乃三(のみ)
(三のくずし字がカタカナの「ミ」)
では、3文字にチャレンジしてみよう
①
②
③
④
⑤
こたえ
①尓之天(にして)
(之のくずし字がひらながの「し」)
(天のくずし字がひらながの「て」)
②春留尓(するに)
(留のくずし字がひらがなの「る」)
さきほどから「尓」がよくでるが、それだけ昔は使用頻度が高かった。
③者之゛女(はじめ)
(之のくずし字がひらながの「し」)
(女のくずし字がひらながの「め」)
“者”はさきほどの「は」の例として出したやつ。
④止畿者(ときは)
(止のくずし字がひらながの「と」)
⑤者奈盤(はなは)
(奈のくずし字がひらながの「な」)
者と盤どちらも「は」の変体仮名となるが、者の方がよく見かける。
たまに「盤」の文字が急に出た時に一瞬なんだっけ?となるかも。
難しいかもしれないが、4文字いってみよう!
①
②
③
④
⑤
こたえ
①三之゛可起(みじかき)
(三のくずし字がカタカナの「ミ」
(之のくずし字がひらながの「し」)
②川年尓毛(つねにも)
(川のくずし字がひらながの「つ」)
(毛のくずし字がひらながの「も」)
③阿可川畿(あかつき)
(阿のくずし字がカタカナの「ア」)
(川のくずし字がひらながの「つ」)
(畿のくずし字がひらながの「き」)
④曽連ゝゞ(それぞれ)
(曽のくずし字がひらながの「そ」)
(ゝは基本的に一文字リピート、ゝゝは二文字以上のリピート、゛がつけば濁る)
⑤来多連利(きたれり)
(利のくずし字がひらながの「り」)
(「来」のように仮名文字といえども、たまにガチな漢字をぶっこんでくる場合もある)
最後は5文字で!
①
②
こたえ
①於以志以可奈(おいしいかな)
(於のくずし字がひらながの「お」)
(以のくずし字がひらながの「い」)
(奈のくずし字がひらながの「な」)
※「いし」と続けて容易に書ける字はこのように合体する場合もある
②畿ゝ為多留(ききゐたる)
(畿のくずし字がひらながの「き」)
(為のくずし字がひらながの「ゐ」)
(留のくずし字がひらながの「る」)
かな文字の学習はあ行から順に覚えるよりも、頻出する字から学んだ方が効率が良い。
ここで出した問題で頻出する字(尓や者など)は、ありとあらゆる古文書でも頻出する。
番外編
①
こたえ
①加八留ゝゞ尓(かわるがわるに)
(加のくずし字がひらながの「か」)
(八のくずし字がカタカナの「ハ」)
(留のくずし字がひらながの「る」)
(ゝゞは二文字以上のリピート)=「ぐ」みたいなやつ
これがスラスラ読めれば仮名文字はもう完璧といっていいかもしれない( ゚Д゚)b
仮名文字が読めると江戸時代の大衆小説くらいなら読むことができるぞ。
ご覧いただきありがとうございました!
難しいと感じた方は「くずし字でよく出る文字8選」からチャレンジしてみてください。
「あ」行から順に覚えるよりは、「に」、「は」、「の」のように頻出する字から学んだ方がいいと思います^^